ファンアートです
最近、時計をモデリングする遊びを覚えた。
当然ながら内部の機関構造までは作れない(知識が無い)ので見た目だけのモデルだが、それ故に「機構的制約無しで好きな意匠のままに造形できる」というエンジニアにとっては夢の様な作業遊びである。
材質もどんなレアメタルだろうが使い放題。加工精度も分子レベルでも実現でき、設計仕様を決める際に上司連中の承認を貰う必要もない。エンジニアのユートピア。
モデリングは3D CAD(Fusion360)を使っている。工業製品のモデリングであればblenderよりも3D CADの方が圧倒的に使いやすい。幾何学的な造形や寸法管理が楽なのだ。blenderは完成した時計の"気持ちの良い画像"をレンダリングする為だけに使っている。
時計の意匠については、実在する時計を基にアレンジを加えて作っている。完全なオリジナル時計ではない。(ちなみに上の画像の物は、僕が実際に所有しているシチズンの時計を基にしている)
いつかは意匠も完全自作したいところだが、まずは実在モデル再現の数をこなして「時計の意匠とはなんぞや?」といった雰囲気を掴むところから始めていこうという訳だ。…掴む前に飽きなければ良いが。
また、意匠の件に加え、僕が使用しているFusion360は個人での非営利用途の為のフリーライセンスの為、今の僕が作った時計モデルは販売をすることができない。また、無料配布(公開)すると、ダウンロードしたユーザーが営利目的にモデルを転用するリスクが払拭できないのでそれもできない。
では、作ったモデルはどうするのか…?
そこで考えたのが、「ファンアートとして作って、本人に送り付けよう!」という画期的なソリューションだった。
そして出来た時計がこちらの2点。
どちらも僕が普段お世話になっている(楽しませてもらっている)VRCワールドと、そのオーナーのプレイヤーをイメージした物になっている。まぁ、PSFについてはまだワールドが存在していない訳だが、その辺は気にしてはいけない。
どちらも数量限定品(限定数: 1)であり、PSFの方はヨツミさんが既に着用してくれている。
早速「実装」して貰えて嬉しい… pic.twitter.com/qDjp0h3cIn
— 皿洗い@七人の侍 (@wrx_overrun) 2020年3月28日
GCの方は…クラブのどこかに忘れてきてしまった。
※僕が付けているのは、あくまで本製造前のプロトタイプということで。
それぞれの時計について少し語っていくのが本記事の主旨である。
Prpject: Summer Flare
まず、意匠の基にする実在モデルの選定についてだが、これは最初からOMEGAのスピードマスター ムーンウォッチだと決めていた。
OMEGAのスピードマスターは、人類史の宇宙進出、特に月面着陸に深く関りがある。
1969年、人類初の月面着陸ミッションに向けて、NASA公式装備としてパイロットへ支給されていたのがスピードマスターだった。人類が初めて未踏の月面に降り立った際、その腕にはこの時計が居たのである。以降、スピードマスターは月のインスピレーションを彷彿させる存在だ。
そしてProject: Summer Flare。まだ断片的な情報しか出ていないものの、象徴的なアイコンが月の形を模している(ように見える)且つ、Lunatic Controlの語源。そしてヨツミさんのツイートから察するに、これは月と何かしらの因果があると考え、月を象徴するスピードマスターをベースにすることにした。
次回作も、その、「月」とか......
— ヨツミフレーム@最高の夏 (@y23586) 2020年3月22日
あと、実物を見ればわかる通り、意匠のほとんどはスピードマスターまんまだったりする。絶妙なバランスでまとまっている時計なので、大きく崩せないのだ。
ちなみに暗い所で若干発光するところも再現していたりする。
PSF仕様として、日付表示のパネルを例のアイコンに変えた。
これの斜め左上に位置するLCのアイコンもそうだけど、アイコンの形状は画像を見て目分量でトレースしたもなので、線の細さとか月の欠ける位置とか、細かいところはオリジナルのそれとはちょっとズレているのだと思う。
ちなみに参考にした画像は下記のCapツイート。これだけが頼りだった。サンキューCap及びPSF対策会議各位。
第一回PSF特別対策会議の様子です pic.twitter.com/RPJGYh4egi
— Cap.🌧️ (@CaptainAyakashi) 2020年3月19日
あと、せっかく3D CADを使っているのに形状をフリーハンドで描いちゃうのは芸が無いと思ってしまったので、しっかりと寸法と幾何拘束を引いた。
形状をトレースする際には、無意識の内に作者の意匠思想を考えるようになる。「ここはどういうつもりでこの線をこの長さで引いたんだろう?」とか、「ここの角度は適当に置いたんだろうか?」等と。
まぁ、アイコンに限らず全ての造形は寸法指示での管理をしていたので、製作中は常にそういった思考をし続ける訳で、完成した際には「3Dモデルデータ」の他にもそういった洞察や思考で到達した知見や発見、疑問、感情も得ることになる。PSF以外にも、ベースとしたスピードマスターやOMEGAも対象に。これが「実際に手を動かしてみることで得られるもの」と漠然と表現されるものだと思う。
PSF攻略、LCアイコンの切り欠き角度や線の幅を考察することでヒントになるものがあるかもしれない。(本当にあったらちょっと嫌だな…怖すぎる)
あと、毎時35分のタイミングで「LC」が再現するようにした。
毎時35分には、時計上に 「これ」 が現れます pic.twitter.com/wgg3HQYKNo
— 皿洗い@七人の侍 (@wrx_overrun) 2020年3月28日
僕のお気に入りポイントです。
この構造を思いついてしまった為に、分針も剣にする必要が出てきたのでここでもトレース作業が発生した訳だが。
カラーリングについては、これはどストレートにヨツミさんのアバターのカラーセットを表現している。白と水色の組み合わせ、素敵。
GHOST CLUB "Unit-00" Edition
PSFウォッチを作って良い気になった僕は、そのまま軽率にGCウォッチも作ろうとした。
GHOST CLUBウォッチ作って良い?
— 皿洗い@七人の侍 (@wrx_overrun) 2020年3月24日
これが結構苦戦した。とにかくコンセプト決めが難しかった。
PSFウォッチは1つの作品と作者のことだけを形に落とし込めれば完結できたものだったが、GCにおいてはそれが難しかった。
これは盲点だったのだが、GCというもの、回すDJやVJ、そして遊びに来ているプレイヤーによって見えてくる光景が変わってくる。表現すべきワールドの印象というものが有るようで無かった。そもそもワールド自体も複数の仕様を乗り継いできているし。
そこで、視点を少し下げて「GCへ遊びに行く僕が付ける時計」という非常に自己中心的なコンセプトにした。つまりは「僕が好きなもの」だ。最早GCのファンアートですらない気もする。まぁ、GC自体が各々での「好き」を持ち寄ることで形成されているような空間なので、その辺りの解釈を以てOKとした。
それが決まった後は早かった。
ベースとする実在モデル ⇒ 僕が好きなPorshe Designの911クロノにしよう。
https://www.porsche-design.com/Uhren/special-editions/911Chrono/
GCアレンジ要素 ⇒ obake曲の中で僕が好きなUnit-00を入れよう。
2眼より3眼の方が好きなんだけど ⇒ 追加しよう。
DJ的な要素を入れたいんだけど ⇒ LevelメーターとBPMカウンターを追加しよう。
アバルト595の同軸マルチメーターが好きなんだけど ⇒ Level/BPMカウンターは同軸マルチにしよう。
ところでフェラーリ458が好きなんだけど ⇒ 458タコメーターのレイアウトにしよう。
でもやっぱりフェラーリ全体的に好きなんだよね ⇒ フェラーリのスポンサー契約を交わしているHUBLOTの針にしよう。
揚げるとキリがないが、こういった「僕の好きなもの全部乗せ」みたいな安直なノリで作っていったGCウォッチ。完成してみるとこれがなかなか格好いい。好きなもの要素が変な干渉をしなくて良かった。
カラーリングだけは、テクノロボの黒メタリック+赤イルミのそれにした。
ヨツミさん、obakeさん、勝手なサンプリングとデータの押し付けを寛大な心で受け止めて頂き本当にありがとうございました。おかげで、めちゃくちゃ楽しい遊びができました。一方的にですが。
今後も気が向いたら、感銘を受けた誰か(どこか)をコンセプトにしたこういうのを作っていきたい。もしかしたら誰かにお声掛けをするかもしれませんが、その際には話だけでも耳を傾けてくれたら嬉しいです。
いやぁ、良い遊びを見つけたねこりゃ。