解釈の個人差
確か今年の2月末。いや、3月入ってたかも。とにかくその頃。
治安の悪い某マンションの地下にあるクラブで、深夜に一人で佇む綺麗めな方が居たので、ちょっと声をかけてみた。
「君、かわいいね。よかったらウチのVに出てみない?」って。
その方は、ヨツミフレームさん(https://twitter.com/y23586)だったんですけどね。
vvvvで作るVJ…うーん…まぁ、一旦VJとして扱おう。VJの話。
(僕の作る映像は自分自身ではVJではないと思ってるけど、今回そこは論点ではない)
以下は先日、5月3日に某クラブでお披露目となったヨツミさんコラボのVJ映像についての記事なんですが、そのVJ映像自体を見ていない方がほとんどだと思います。
運良くVJ映像を見た方はその映像を思い浮かべながら読んでもらい、未視聴の方は今後も今回のVJ映像を使用してDJをしますので、次回以降で今回の記事を踏まえて視聴頂ければと。
僕はこれまで既にいくつかVJ用の映像を作っていました。
自分のアバター(=自作の3Dモデルのキャラ)を主体にし、DJの音に合わせてキラキラしたりピカピカしたりパァーっと広がったりシュッと消えたりする感じの映像です。(伝われ)
それの拡張版として、"7.5pep"という某仮想3人組ユニットを主体とした映像も作った。
7.5pep版製作当初は今までのソロでのVJ映像同様な雰囲気で作ろうと思ってたけど、完成した7.5pep版VJ映像はもはや簡易的なミュージックビデオになっていた。
7.5pepVJは、八月二雪さんによるカバーのshelterを基に作った。
曲の展開に合わせて、midiコンにてリアルタイムに映像やエフェクトを切り替えて繋いでいき、一つのミュージックビデオにします。
ただ、このスタイルなら別にリアルタイムでmidiコンを用いた操作をしなくて、普通にAfterEffectsで動画として作ればいいじゃんって正直ちょっとだけ思っていました。
「まぁ、せっかくだし」という何の根拠もない理由でvvvvでやりきりましたけど。
ちなみに僕、八月二雪さん大好きです。
shelter以外のカバー曲やオリジナル曲もたくさん作られていらっしゃるので、ぜひ聴いてください。良いよ。
ただ、ミュージックビデオVJ(?)にはひとつ難点があって、現状のVRC環境ではtwitch等ストリーミング再生時の映像と音のズレが不可避っぽいので、VRC内のDJの際に7.5pepVJを使っても、僕が意図した構成のまま他のプレイヤーの皆さんに見てもらうことはできない。
発信側が曲の展開に合わせて切り替えても、視聴者側では全然違うタイミングで映像が切り替わってしまう。
せっかく作ったのに正しい形で見てもらえないのは悔しいので、動画にしてyoutubeにアップしたんだけど、それってもうVJでもなんでもなく完全にただMVじゃん…ということに後々気がつきました。(動画録画の際にはちゃんとmidiコンでポチポチvvvvを操作しています。信じてください)
まぁ、発信する方法で若干躓いたけど、ソロも7.5pepもどちらの映像自体はかなり高い自己満足度に達した。今まで漠然とイメージしてた「こんな画が見たい」という欲求が具体的な形になったのだと思う。
ところで今年のCoachellaのPerfumeライブ中継映像すごかったですよね。あれです。僕が好きな映像って。
そんな感じで気に入ってる2つのVJ映像なんで、若干の改修をしながらもしばらくDJのお供として使い続けていた。
…が、人間やはり欲深いもので、使い続けていくと徐々に飽きが表面化してくるんだよね。これは仕方ないこと。仕方ない。
そこで、新しくVJ映像を作ろうと決意し、冒頭のヨツミさんの話に至ります。
今回の新作Vも、当初はこれまでのセオリー通り、
(1) 3Dモデルを配置する
(2) カメラワークを決める
(3) なんか綺麗な光とかリングとか適当に置く
(4) 音に合わせて色とか良い感じになるよう上手いことする
の4ステップで作り上げようとしていた。ヨツミさんの3Dモデルをお借りして。
…ただ、それだと今までの延長線上に過ぎない。飽きが解消されない。
というか、実際ある程度のところまで作っていたんだけど、やはり案の定今までの映像と似たようなものがそこにはあった。
やっぱりね、作りたい画を自分で考えると無意識のうちに自分の好みに寄っていっちゃんだなと。無意識に適当な料理を作ると、いつも同じようなメニューになっちゃう的な。
ここに結構大きく躓いた。何度白紙に戻しても何にも新しい画が思いつかない。
結局、現時点でもこれについては根本的なところでは克服できていない。難しい……
今回、このお悩みについては「そもそも自分で創造しない」という画期的な方法で対処した。僕の代わりにヨツミさんに考えてもらえばいいのです。天才か?
ヨツミさんへ具体的に依頼した内容は、
「なんでもいいから好きなもの複数個教えて」というもの。
何かテーマをヨツミさんに決めてもらって、そのテーマを僕が勝手に解釈して形にするという手法を図った次第でございます。
ネタバレは面白くないので頂いたテーマは公表しないけど、テーマはどれも奥行きのあるものばかりで自由に解釈をする余地が多分にあり、のびのびと各テーマについて気持ちいい思考ができた。楽しかったなぁ…
テーマ毎に短いループ映像を作り、全体ではそれらのテーマ(ループ)をBPMに合わせてスイッチすることでVJ映像として構成した。(諸々の制約があり、今回のVJでは最終的にテーマ数は8個に落ち着いた)
テーマを映像にするにあたっては、そのテーマを僕なりに解釈する過程があったけど、今回は敢えてそのタイミングでテーマの源泉であるヨツミさんとの会話はしていません。
なので、テーマの解釈には、ヨツミさんと僕との間で確実に乖離が生じています。
乖離どころか、そもそも方向性も180°異なっていたり、次元数も違うかもしれない。
そういった“解釈の個人差”によるランダム性のようなものや、想定と結果のギャップを楽しみたかった訳です。
僕の作るVJ映像は、フラクタルやグリッチ等で得られるランダム要素が少ない。意外性が無いと思う。まぁ、欲しい画がそういう画ではないから、なるべくしてなっているんだけど…
もちろんvvvvのノードとしてはRandom spreadは愛用しまくっているけど、ただそれも結局は判定閾値を任意で決め、Random spreadの出力値と判定値を比較した結果を得ているだけなので、少し離れた視点ではあまりランダム性という楽しみはちょっと少ない。
これについて考えていくと、「自分でコントロールできない領域でのランダムじゃないと、楽しめないのでは?」という、若干危ない香りのする結論が出てきた。
最も身近な“自分でコントロールできない領域”は、“他人の思考”なんですよね。
他人の思考とか解釈なんて、相手と会話をしない限り絶対にわからない。
わ、何それめっちゃ良いランダム性~。想定との乖離~。良い~。 みたいな感じのノリ。
とまぁ、映像の見た目の以外にも、こういった誰にも伝わらない思惑があったりしたのが今回のVJ映像でした。
このまま黙ってたら絶対誰にも伝わらないなと思い、ここに書き残していきます。
(誰にも伝わらないコンテンツばかり作ってんな…)
映像としても、約60分のDJの間に色が変わったり白抜きになったりと変化することで、「この空間はどちらが主体なのか?」という認識の変化を狙ってたりするんだけど、ちょっとそれ以上説明するのは恥ずかしすぎるので、そのあたりも見て頂く方々に自由に受け止めて貰えればいいなって思ってます。
次にDJをする際には、そんな目線で見るのも良いかもしれません。いちばんは踊ってもらうことですが。
今回、モデルデータ提供やテーマの提供をご協力いただいたヨツミフレームさんには本当に感謝です。ありがとうございました。
製作期間が長くなってしまいましたが、製作過程もかなり楽しかったです。良い刺激になりました。またどこかで一緒にやらせてくださいね。