お皿洗い

田舎の町でエンジニア。趣味のお話をふわっと書きます。

助手席

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僕は車を運転することが好きなんだけど、それと同じぐらいに他人が運転する車でくつろぐことが好きだ。むしろそっちの方が好き。

ゆったりとシートに身体を預け、好きな音楽を聴きながら流れる風景を呆然と眺める。運転手に気を使っているような雰囲気を出すために、たまに「ガム食べる?」とか聞いちゃったりして。

基本的には目的地に向けて移動をする手段なんだけど、そこに幸せを覚えてしまうのです。

これこそ、人を幸せにする車の使い方。サーキットで速いだの燃費が良いだの、そんなことはどうでもいい。

 

ということで、 "助手席での過ごし方"にフォーカスをした、これまで実際に乗って体験してきたお話を徒然と。決して良し悪しを批評するものではなく、完全に僕自身の感覚と好みの話なので、その辺はどうか何卒何卒…

 

メルセデス・ベンツ Cクラス

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最初に結論から書くと、一番好きな助手席空間はCクラス。

いきなりベンツかよって思うかもしれないけど、Cクラスは比較的現実的な価格帯やサイズで、日本でもかなり多く走ってる大衆車。

この車はまずシートが秀逸で、座った際の姿勢と高さがとても良い。どっしりと深く腰を置くことができ、膝や足首の角度も疲れない絶妙な角度に落ち着く。座るとちょうど鎖骨あたりに来る窓の高さで、体が車体に包まれている安心感もあってよろし。というかシートに多くの可動部があり調整ができるので、まぁどうにでもなれる。あと、皮シートの硬さが程よく張りがある硬さで気怠さが無くて立派。

車の快適性は体の姿勢で大きく決まる。姿勢がキマっていれば、他に何があっても(何もなくても)大体は快適に過ごせてしまう。その点、Cクラスはとても強くて、ちょっと良いパーソナルチェア並みにくつろいでしまう。

脚周りも程よく引き締まって好き。これは人によって好みがわかれるところで、路面からのショックをとにかく吸収するふわっふわの脚が好きな人にとっては彼は合わないだろう。昔のクラウンみたいな。

こいつのダンパーは、路面からのショックの入力は程よく伝え、それをサスペンション1ストロークでしっかりと収束させ落ち着かせるという、いかにもドイツ車って感じの味。車体の姿勢がシャキッと決まったまま走るので安心感が違う。たとえドライバーが運転が下手でも車がしっかりしてるので多少は大丈夫。そう、メルセデスなら君の大丈夫になれるんだよ。

あと、ボディ構造(特にエンジンルーム内)や遮音材への投資が半端ないので、走行中の各種ノイズはかなり小さく、純正搭載のBurmesterオーディオが結構いい仕事をするので、音楽も素敵に楽しめる。低音、しっとり出てます。

ただ、どうしても一つだけ気に入らないところがドアロックのノブ位置。これがドア内装の窓枠側についている。

車に乗る時の姿勢とは、「どっしり深く座って、リクライニングを倒し気味にしてふんぞり返り、両足を前に投げ出し、肘をドアの窓枠に乗せ、その握りこぶしに頬を押し付けクッソつまらなそうな表情で風景を眺める」というものじゃないですか?その際の肘の位置にドアロックのノブがあって、肘が当たり痛いんです。これがいただけない。

まぁ、そういう座り方をしないのであればパーフェクトな一台。ぜひ、旦那さんや彼氏が車購入に悩んでいたら、メルセデスを推しましょうね。あなたが幸せになれます。

 

 BMW 5シリーズ

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車体はデカいくせに意外とそこまで中が広くない(感じがする)。

車体の重さをそのまま感じさせる脚の動きで、よほど運転が上手いドライバーじゃないとなんというか不安になってくる…が、シートが優しすぎて不安を抱えたままスッと寝てしまう。快眠できるわけでもない。ただただ寝てしまう。なんなんだこいつは…

あまり会話をしたくない人と移動する時には良いかもしれない。

この車の経験のせいで、乗ったこともないアウディのA7あたりのヘビー級セダンを「どうせそういう感じでしょ?寝ちゃうぞ?」という偏見を持ってしまっている。

すぐに寝てしまうので、オーディオがどうこうと考えたことがない。もはや寝室。

 

マツダ RX-8

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足元の空間の広さにビビる。見た目の割にめちゃくちゃ広い。脚をまっすぐ伸ばしきれる。例の「正しい着座姿勢」がビシッと決まる。

高速道路を100km~200km程度の中距離移動をする分にはちょうどいい。見た目の割にそこまでハードではない脚と必要十分なパワーのロータリーエンジン。程よいエキゾースト音。とにかく全体的に「見た目の割に優しい」良いスポーツカー。高速巡行が心地良い。

イルミ系が全てアンバー色で統一されているので、夜になると車内が小綺麗でごきげんになる。いちいちカッコいいんだよなぁ…一切カスタムをせず、どノーマルのまま愛していきたい。

ただ、基本はスポーツカーなのでノイズ類は雑味のまま飛び込んでくるので、オーディオしっかり聞きたいならデッドニングなり、ひと手間かけたいところ。

あとトランスミッションの放熱が激しいので、冬場はヒーター要らずで足元から暖かく快適。夏場は覚悟を決めましょう。

 

スバル フォレスター

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助手席は普通。センターコンソールにあるX-MODEダイヤルをがっちゃがっちゃと勝手に操作してドライバーから怒られることがあるぐらい。

この車に関しては、助手席よりも後部座席の快適性が素晴らしいので積極的に後ろに座っていきたい。

助手席はドライバーと1:1みたいな空間になるので、お互いにお互いの存在を少なからず認識してしまう。リアシートはそうではない。ドライバーの監視から脱出した自由空間なのだ。誰の視線も意識する必要がない。前席での話題に相槌を打つ必要もなければ、笑顔を振りまく必要もない。そこは完全にプライベートでパーソナルな空間…そうね、感覚的にはトイレの個室が近いかもしれない。

流れる風景、素敵な音楽、交わらなくていい雑談、足元にエアコンと電源、ひじ掛けだって出てくる。そんなトイレ。これは住める。

助手席としてはメルセデスが最強だと信じてますが、リアシートではフォレスターが好きです。

あと、スバルSUV全般に感じることだけど、スバル車は基本的にフロントヘビーで後ろが跳ねるので、リアシートに人や荷物を載せると車全体の動きがしっとり落ち着く。良いことしかない。友人がSUVを買おうとしているのであれば、こいつを推して真っ先にリアシートに座りましょう。そこに幸せがある。

 

ポルシェ マカン

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重たいドアを開けて早々に「サイドシル太いなぁ…」と思った。しっかりと足を上げて、広げて、跨いで乗り込む。そして狭い車内空間。…こいつ、この太いタイヤを収める為だけにボディ膨らませてるんだなと。

ホールド性の強いシートに座ると、自然とスポーティーなやる気に満ちた姿勢になる。本人の意思に関係なくそうなる。”お前はポルシェに乗っているんだ”と嫌でも痛感させられる。そんなシートの作り。多分、911の作りをそのまま持ってきてるんじゃないかな…

センターコンソールは最近のポルシェっぽく太く高い構造なので、ドライバー席との部屋分けとしてしっかりと機能してて素敵。カップルでいちゃつきたいのであれば不向きでしょうね。コンソール上で手を乳繰り合うと、大量にあるポルシェのアシスト機能のスイッチに触れて作動してしまうでしょう。車高とか上下しちゃう。

走りだすと、運転していなくてもわかるタイヤの太さと脚の硬さ。がっつがつと突き上げられ、ゆっさゆさと轍に振られる。”いいか、お前はポルシェに乗っているんだ”と声が聞こえる。

良くも悪くもゲインが高いので、ドライバーの運転の優しさが求められる。雑な人が運転するとかなり悲惨なことになる。サンバーの方がまだ良い。

「そっか、俺は今ポルシェに乗せられているんだ…」と考えることで精いっぱい。

嗚呼、ポルシェ…ポルシェ…ポルシェ…

 

ロータス エリーゼ

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ドアを開けた際、良い感じとのころでドアを保持してくれる機構「ドアストッパー」が無いので、手を離すとどこまでも開いていく。隣に駐車している車いる際には開閉に気を付けようね。(危なかった)

鉄板むき出しの内装、タイヤが巻き上げた砂がボディにビチビチとあたり、エンジンやらトランスミッションからメカニカルなノイズが延々と鳴り続ける。

オーディオの音質云々の前、まずその個体にオーディオがついているかどうかの問題。下手したらエアコンすらない。ドアノブなんて紐だぞ。

ただ、「車が走る」という要素をすべて無修正で受け止めることになるので、そういった意味での愉しさであればこいつに勝てるものはない。地面を這いつくばるようにキビキビと走る様は、他の車では得られない体験。この経験をすると、他の車で中途半端に走りを愉しもうという気が失せるので、車選びがとても割り切ったものになる。いつまでもスポーツカーばかり欲しがる大きな男の子各位は一度エリーゼに乗って良い意味での”諦め”を知った方が良いかもしれない。

あと、ポルシェもそうだったけど、こいつは更に酷いぐらいにサイドシルが太い。そして高さがある。もはやバスタブである。

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乗り込むには、スマホが置けるこの幅を跨ぐ必要がある

これ、短いスカートを履いた女性だと乗り降りが出来なくなってしまうので、もうなんかいろいろと駄目である。身近でも何人かエリーゼに乗っている人がいるが、ほぼ全員が奥様や彼女から強烈な批判をされながら歯を食いしばって生きている。

 

もし身近な人が車選びに悩んでいるとき、そっと助手席視点での選び方も囁いてあげると、その後の生活に潤いが得られます。

ただ、安直に「私、メルセデスがいいなぁ」ばかり言っているとちょっとアレな人に思われてしまうかもしれないので、遠回しにメルセデスに着地するように誘導してあげましょうね。

 

良い車、良い空間、良い音楽、良い風景…

求めていきましょう。